研究成果「エコチル調査で
わかったこと」
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専門用語辞典(PDF)研究の目的
研究の目的
早産は出産の時期によって早期早産と後期早産に分けられます。特に早期早産によって小さく生まれた赤ちゃんは、臓器や器官が未成熟であることが多くあるため、生存率の低下や後遺症のリスクが高くなることが指摘されています。早産の原因として様々な因子がありますが、近年海外の研究グループによって重金属へのばく露が早産に関係している可能性が報告されています。しかしながら現在報告されている研究対象者の人数はそれほど大きいものではなく、測定されている重金属の数も少ないため、重金属ばく露と早産の関係はよくわかっていません。
そこで本研究では、大規模コホート調査の結果を用いて、妊婦血中の複数の金属濃度と早期・後期早産との関係を調べることにしました。このような大規模コホート調査の結果を用いて複数の金属と早産の関係を検証した研究は世界で初めてであり、画期的な研究といえます。

方法
平成28年4月の出産に関する情報と平成29年4月の第一次金属類のデータ(妊婦2万人に関する重金属の分析結果)中の妊婦の血中金属濃度(カドミウム, 鉛, 水銀, セレン, マンガン)を使用しました。解析対象者は単胎妊娠の母親のうち、生産(死産を含まない)に限定しており14,847名が最終解析対象者数です。
対象者は早期早産(22~33週)、後期早産(34~36週)、正期産(37週以降)の3群に分けて解析されました。各金属濃度は濃度の小さい方から大きい方へ4分割して解析に使用しました(第1四分位群:Q1、第2四分位群:Q2、第3四分位群:Q3、第4四分位群:Q4)。解析にあたっては、BMI(妊娠前)、喫煙歴(本人、配偶者)、飲酒歴、妊娠回数、出産回数、子宮の手術歴、子宮内感染の有無、収入、教育歴、児の性別の11因子を調整しました。
研究の結果

妊婦の血中カドミウム濃度が最も高い群は、最も低い群と比較して、早期早産の頻度が1.9倍高いことがわかりました。
妊婦の血中鉛、水銀、セレン、マンガン濃度は早期・後期早産と統計学的に有意な関係を認めませんでした。
考察
本研究対象者の血中カドミウム濃度の中央値は0.66(ng/g)でした。性や年齢によって違いはありますが、過去の研究による日本人の血中カドミウム濃度は大体1.0(ng/g)ぐらいなので、必ずしも本研究対象者の血中カドミウム濃度は高いわけではありません。本研究ではカドミウム曝露源を同定することはできませんが、一般的にはたばこ、食品、環境中に含まれるカドミウムが曝露源として考えられています。本研究対象者の喫煙妊婦の血中カドミウム濃度の中央値は1.07(ng/g)であり非喫煙妊婦の血中カドミウム濃度の中央値は0.64(ng/g)でしたので、たばこがカドミウムの曝露源になっている可能性は考えられます。ただし、たばこをカドミウムの曝露源として考える場合、たばこの本数や受動喫煙による曝露を含めた検討が必要です。今後はたばこのみならず、食品や環境中に含まれるカドミウムも含めた曝露源の特定が必要になると考えられます。
本研究で早産と関係が認められなかったその他の金属の曝露が、必ずしも早産に関係がないとは断定できません。また今後の研究において、本研究と同様に妊婦の血中カドミウム濃度と早産の間に統計学的に有意な関係が認められるかはわかりません。これから10万人のデータを解析して、再度検討を行う必要があります。
早産に関係する因子は金属以外にもあります。本研究のみでは金属曝露がどのくらいのリスクで早産に関係しているかはわかりません。例えばアメリカ人のカドミウムの平均血中濃度は0.29(ng/g)と本研究対象者より低いですが、本研究の早産発生率は4.5%、アメリカの早産発生率は約10%であり、アメリカの早産発生率は本研究のおおよそ2倍です。本研究では検討されていない人種、遺伝的要因、ストレス、妊婦の既往歴といった早産の発症に関係する可能性のある因子を考慮した研究が金属曝露と早産の関係を明らかにするために今後必要であると言えます。
エコチル調査では、金属以外の環境因子、既往歴、社会経済的因子、精神的肉体的ストレス、さらには遺伝要因についても調べています。今後これらの因子と早産との関係についても知見が出てまいります。これらも総合してカドミウムと早産の関係について検討する必要があります。
結論
妊婦の血中カドミウム濃度が最も高い群は最も低い群と比較して早期早産の頻度が1.9倍高いことがわかりました。妊婦の血中カドミウム濃度と後期早産の間に統計学的に有意な関係は認められませんでした。しかしながら本研究では、カドミウム曝露が早期早産にどのような機序で影響を及ぼしているか推察するために必要と考えられる因子(例えば炎症性マーカーや妊娠を維持させるために必要なホルモン濃度)の測定は行っておらず、カドミウム曝露と早期早産の機序を明らかにすることはできません。今後様々な研究が行われ、機序の解明が行われることが期待されます。

POINT
- 妊婦の血液中の金属濃度と早期・後期早産との関連を調査
- カドミウム濃度が最も高い群では最も低い群と比べて早期早産が多かった
Q&A
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この研究で早期早産と関連していたカドミウムってどういう物質なの?
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カドミウムは、鉱物や土壌などに天然に存在する重金属で、鉛・銅・亜鉛などの金属とともに存在することから、鉱山開発が多かった日本ではとても身近な物質なんだ。
自然環境中のカドミウムが農畜水産物に蓄積し、それらを食品として摂取することで、カドミウムの一部が体内に吸収され、主に腎臓に蓄積するんだ。カドミウム濃度の高い食品を長年にわたり摂取すると、腎機能障害を引き起こす可能性があるとされているんだ。
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どんな食品にカドミウムは含まれているの?
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カドミウムは、お米、野菜、果実、肉、魚など多くの食品に含まれていますが、日本においてはお米から摂取する割合が最も多く、日本人のカドミウムの1日摂取量の約4割はお米から摂取しているとされているんだ。
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お米をたくさん食べても大丈夫なの?
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もちろん大丈夫だよ!食品安全委員会の食品健康影響評価によると、「近年、日本人の食生活の変化によって1人当たりの米消費量が1962年のピーク時に比べて半減した結果、日本人のカドミウム摂取量は減少してきている。2007年の日本人の食品からのカドミウム摂取量の実態については、21.1μg/人/日(体重53.3kgで2.8μg/kg 体重/週)であったことから、耐容週間摂取量の7μg/kg体重/週よりも低いレベルにある。したがって、一般的な日本人における食品からのカドミウム摂取が健康に悪影響を及ぼす可能性は低いと考えられる。」とされているよ。だから、しっかりお米も食べようね。
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食品以外にもカドミウムを摂っているの?
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呼吸器を介して体内にカドミウムが吸収され、体内を循環する経路があるよ。
例えば、たばこの煙の中にはカドミウムが多く含まれているから、喫煙する人は、喫煙しない人よりも、カドミウム摂取量が多くなるんだ。やっぱり禁煙は大切だね!
著者・雑誌掲載情報
この研究成果は、環境科学・疫学の専門誌である「Environmental Research」に
2018年10月に掲載されました。
筆頭著者名: 辻 真弓
所属UC名: 産業医科大学SUC
The association between whole blood concentrations of heavy metals in pregnant women and premature births: The Japan Environment and Children’s Study (JECS)
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