研究成果「エコチル調査で
わかったこと」
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専門用語辞典(PDF)研究の目的
この本研究では、妊娠中のお母さん14,408名の血中金属類濃度(カドミウム, 鉛, 水銀, セレン, マンガン)と、アレルギー反応に関連するIgE抗体との関係を調べました。
近年、海外の研究で、金属とIgE抗体に関連がある可能性が報告されており、また、臍帯血のIgE抗体とお子さんのアレルギー疾患との関係も報告されているため、このテーマに取り組みました。この研究は、大規模コホート調査の結果を用いて複数の金属と特異的IgE抗体の関係を検証した世界初の画期的な研究です。
方法は、妊娠中のお母さん14408名を対象に、血中金属類濃度を分析して濃度によって4つのグループに分けました。IgEは、総IgEと特異的IgE抗体(卵白、ハウスダスト、スギ、動物上皮、蛾)値を分析して、血中金属類濃度とIgE値との関連を調べました。

研究の結果

| 血中水銀とスギ: | 血中水銀濃度の低いグループと比べて、やや高いグループでは1.2倍、高いグループでは1.4倍、スギ特異的IgE抗体高濃度の人がいた |
|---|---|
| 血中水銀とハウスダスト: | 血中水銀濃度が高いグループの方がハウスダスト特異的IgE抗体高濃度の人が少なかった |
| 血中水銀と動物上皮: | 血中水銀濃度が高いグループの方が動物上皮特異的IgE抗体高濃度の人が少なかった |
| 血中セレンとスギ: | 血中セレン濃度の低いグループと比べて、やや高いグループは1.2倍、高いグループでは1.3倍、スギ特異的IgE抗体高濃度の人がいた |
| 血中マンガンと動物上皮: | 血中マンガン濃度が高いグループの方が動物上皮特異的IgE抗体高濃度の人が少なかった |
考察
この研究では、妊娠中のお母さんの血液中の金属の種類によって、アレルギーに関連する特異的IgE抗体の値に違いがあることが分かりました。
水銀では、特異的IgE抗体によって高濃度グループが高い場合と低い場合がありました。セレンではスギ特異的IgE抗体高濃度と、マンガンでは動物上皮特異的IgE抗体高濃度と関連がみられました。
人の細胞や動物を用いた実験においても、水銀ばく露がIgE産生に関わるリンパ球の活性化に関係しているという報告はありますが、その機序はわかっていません。セレン、マンガンとIgE抗体との関連もほとんど研究がおこなわれていません。今後の研究によって機序の解明に期待されます。
結論
お母さんの血液中に含まれる金属のうち、水銀はスギ、ハウスダスト、動物上皮の特異的IgE抗体の濃度と関連していました。セレンはスギ特異的IgE抗体の濃度と、マンガンは動物上皮特異的IgE抗体の濃度と関連していました。
セレン、マンガンは必須微量元素といわれ、私たちの生命活動に必要な元素です。セレン、マンガンがIgE産生に及ぼす影響を調べる研究はごくわずかです。今後もさまざまな研究で必須微量元素とIgE産生との関係が明らかになることが期待されます。

POINT
- 血中水銀濃度の低いグループと比べて、高いグループではスギ特異的IgE抗体高濃度の人がやや多かった
- 血中水銀濃度の低いグループと比べて、高いグループではハウスダスト・動物上皮特異的IgE抗体高濃度の人はそれぞれやや少なかった
- 血中セレン濃度の低いグループと比べて、高いグループではスギ特異的IgE抗体高濃度の人はやや多かった
Q&A
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アレルギーってよく聞くね?
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私たちの体には異物が入ってくると攻撃して排除する仕組みがあるんだ。この侵入してきた物質を「抗原」というよ。
抗原のなかでも、特にアレルギーの原因となるハウスダスト、花粉、食物などを「アレルゲン」というんだ。
そして、アレルゲンを認識して排除する仕組みのことを「アレルギー反応」っていうよ。 -
アレルギー反応ってどんな反応なの?
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体の防衛反応だね。
ただ、花粉やホコリは本来であればそんなに体に危険なものではないんだけど、体が「体にとって危険なものだ!」と思い込んで、体の免疫が過剰に反応してしまう反応といえるよ。
くしゃみが止まらなかったり、かゆみがでたり、鼻水が止まらなくなったり。場合によっては、気道が炎症して狭くなって呼吸が難しくなって命に関わることもあるよ。
アレルギー反応には予防や治療が必要なこともあるから、注意が必要だね。 -
この研究で紹介されたIgE抗体が体に悪いの?
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アレルゲンが体内に侵入することで産生されて、体内の細胞や血球の表面にくっついてアレルゲンと出会うのを待つんだ。これを「感作」というよ。
感作されただけではアレルギー反応は起きないんだけど、感作された状態で再びアレルゲンが侵入してIgE抗体に反応すると、アレルギー症状を起こす様々な物質が放出されるんだ。 -
IgE抗体が多いほどアレルギー症状はひどいの?
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IgE抗体の値とアレルギー反応による症状は必ずしも比例するわけではないんだ。
だけど、特異的IgE抗体(IgE抗体の中でも特に固有のアレルゲンにだけ結合することのできる抗体)の量はアレルギー診断の参考値として広く医療の現場で使われているよ。
著者・雑誌掲載情報
この研究成果は疫学研究の専門誌「Journal of Epidemiologyl」に
2019年12月に掲載されました。
筆頭著者名: 辻 真弓
所属UC名: 産業医科大学SUC
Association between metal levels in whole blood and IgE concentrations in pregnant women, based on data from the Japan Environment and Children’s Study
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