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研究成果「エコチル調査で
わかったこと」

子どもの発達・病気

産業医科大学 妊娠中の仕事 原油精製物 RO ぜん息 ぜん鳴

妊婦の職業上の原油精製物使用と子どもの生後12か月までのぜん息(ぜん鳴)発症の関連

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研究の目的

原油から作られるものには、灯油、石油、ベンジン、ガソリンなどがあります(これをまとめて「RO」と呼びます)。これらを燃料として使用するときに発生するガスや揮発成分を吸うことで健康被害を起こすことが知られています。しかし、妊娠しているお母さんが通常の仕事を行う範囲でROを使った場合に、生まれた子どもの健康にどんな影響があるのかは、まだはっきりわかっていません。

そこでこの研究では、妊婦の職業上の原油精製物(RO)の使用頻度と、子どもの生後12か月までのぜん息発症の関係を調査しました。

エコチル調査参加者のうち、妊婦のRO使用頻度、出生した子どもの生後12カ月までの喘息診断の有無、その他関連する質問票の回答データが揃った母子39,736組を解析対象としました。使用頻度は質問票で調査し、「使用なし」、「月単位で扱った」、「週単位で扱った」の3グループに分類し、回答を妊娠1216週と妊娠2228週に分けました。子どもの喘息は、生後12か月までにぜん息診断を受けたかを1歳質問票データで調査しました。RO使用頻度とぜん息診断との関連を解析しました。

研究の結果

妊娠中に仕事でROを扱う頻度が高いほど、生まれた子どもが生後12か月までにぜん息と診断される率が高くなりました

妊娠中にROを使う頻度が高いお母さんのグループでは、使っていないお母さんのグループに比べて、生まれた子どもが1歳になるまでにぜん息と診断される可能性が約1.45倍高くなりました。

使用時期を妊娠1216週(4か月ごろ)と2228週(67か月ごろ)を分けた解析でも、ROの使用頻度が高いお母さんほど、子どもがぜん息になる可能性が高くなりました。

さらに、2つの時期をあわせて調べたところ、使用頻度に相関してぜん息になる可能性は上昇し、妊娠1216週では強く、妊娠2228週では弱い関連の有意性が示されました。

考察

妊娠中に仕事でROを使う頻度が高いほど、生まれた子どもが1歳になるまでにぜん息と診断される可能性が高いことがわかりました。特に、妊娠1216週にROを使ったときのほうが、妊娠2228週の時期よりも、子どもがぜん息になる可能性が高いという結果でした。

ただし、この研究ではROをどれくらい使ったかを正確に測れていないことや、1歳までのぜん息の診断が確定的でない場合もあるなどの限界があります。これからさらに詳しい研究が必要です。

結論

妊娠中に仕事でROを扱う頻度が高いほど、生まれた子どもが生後12か月までにぜん息と診断される率が高くなりました。

POINT

  • 母親の妊娠中の原油精製物の使用と子どもの生後12カ月までのぜん息発症との関連を調査
  • 妊娠中の原油精製物の使用頻度が高いほど、子どものぜん息が増加
  • 特に妊娠12~16週の週単位での原油精製物の使用では1.67倍に増加

Q&A

原油精製物質(RO)ってなに?

ROはRefined Oilの略だよ。
原油は精製されると、化学的な処理や蒸留によって異なる種類の物質に分離されるんだ。ガソリン、石油ガス(LPガス)、軽油(ディーゼル燃料)、灯油、重油、潤滑油などがあるよ。

ROにどこで曝露するの?

身近なところでは、ガソリンスタンドで給油するときや、家で灯油ストーブを使うときにROに曝露しているといえるね。

石油由来の化学製品や、機械部品を滑らかに動かすための潤滑油、化粧品の一部などにもROが含まれていて、日常の中でも触れているんだよ。

たくさんROにばく露すると体によくなさそうだね?

煙やガスを吸い込むことで、咳やぜん息、肺のトラブルを引き起こすことがあるよ。直接触れると、皮膚が赤くなったり、かぶれたりすることがあるし、長期的なばく露は、頭痛やめまい、集中力の低下など、神経系に悪影響を与えることもあるんだ。

著者・雑誌掲載情報

この研究成果は、2023年12月に「Clinical and Experimental Allergy」に掲載されました

筆頭著者名: 川村 卓
所属UC名: 産業医科大学SUC

Occupational Exposure of Pregnant Women to Refined Oil and Infant Wheezing: Japan Environment and Children’s Study findings

DOI: 10.1111 / cea.14404

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